旧落石無線送信局(現 池田良二スタジオ)  
所在地: 北海道 根室市 落石西244-4

北海道根室半島南部の太平洋側、サカイツツジの自生地となっている草原のなかに佇む 鉄筋コンクリート造の要塞のような重厚な建築物。もとは旧逓信省管轄の落石無線送信所 として1908年(明治41年)に建造されるも、幾度かの火災・戦災に見舞われ、1925年(大正14 年)に現在の姿に再建された。 建物自体が北米航路の要衝である根室の要としてさまざまな歴史的出来事に立ち会ってきた重要な生き証人でもある。

たとえば、1929年には、ヤクーツク飛行中のドイツ飛行船ツェッペリン泊号と日本初の交信に成功、また、1931年(昭和6年)、北太平洋横断飛行中のリンドバーク機を無線により誘導、偉業達成を陰で支えた。

現在は根室出身の版画家、池田良二氏(武蔵野美術大学教授)の個人スタジオとして廃墟の状態からの改修途上にある。かつて、無数の船舶や航空機だけでなく、幾多の場所との交信を繰り返してきた、いわば、外に向けて無限に対話が開放されていた特殊な空間、限りなくパブリックな場であったといえる。