「銅版画」を核に制作活動を展開しているふたりの版画家、井出創太郎+高浜利也というユニットはアーティストとしての自己を前面に押し出す作品というよりは、むしろ、特定の「場」が積み重ねてきた時間の記憶を掬い取りながら、自分達の想いを重ね合わせて寄り添うような空間を制作、展開してきた。あくまで「場」や「時間」の中継者であるというそのスタンスは「落石計画」でも基本的に踏襲していくことになる。

 「落石計画」の目的は、あくまで中継者の立場であらたなコミュニケーションのあり方を模索することであり、茶室というフォーマットに当て嵌めながら、無線局として外に開かれていたパブリックな空間に、究極にプライベートな対話空間を現出させることにある。このようなアートの介在によって「時間」や「場」を中継する行為の特殊性は、旧落石無線局が中心(=都市)から隔絶された周縁(=地方、辺境)に位置している事実によりさらに増幅されるであろう。それは、孤立した環境内で完結する自己(アーティスト)とアートの関係性を問うだけでなく、東京への一極集中(あるいは地方の疲弊)が進むわが国における脱中心的な文化の発信、コミュニケーションのあり方の可能性を問う社会的メッセージをも孕んだ実験的プロジェクトといってもよい。実現するための方法論や場の特殊性を鑑みて、3期3年という長期に亘る展開は必要不可欠となる。

 各年の展覧会開催にあわせて実施されるワークショップや茶会、アーティストトークなどの各種行事による地元地域への浸透は「落石計画」の円滑な推進のためというだけではなく、井出創太郎+高浜利也のユニットが作品とともに「場」である落石に根付くための制作行為そのものであるといっても過言ではない。

 3年後に構築される対話空間(=銅版による茶室)。アートの力を足掛かりに「場」のもつ力を最大限に引き出し、かつての無線局から再び、落石を世界に向けて発信する。これが「落石計画」の最終的なねらいである。

 

プロジェクト期間 2008年8月1日〜2010年8月10日

         第1期 2008年 8月1日〜5日
        
         第2期 2009年 8月2日〜6日

         第3期 20010年 8月初旬

主催 落石計画実行委員会

場所 北海道根室市落石岬 旧落石無線局跡

 

落石計画ホームページ制作 / 金井理恵 貞包将彦 藤永覚耶